教育専門職免許状

タイの教育・教員養成に関する政策は、この10年、ダイナミックに動き続けています。そしてそれは、タイの中学や高校の日本語教員にも何らかの影響を及ぼしているはずです。
今回は、教員免許制度についてまとめます。

教員免許制度関連年表

    →第81条に、教育振興のための法整備/専門職としての教員の発     達を図ることが盛り込まれる

  • 1999年仏暦2542年国家教育法」      

    →国家の教育の根本理念を明示(上記憲法第81条を受けて制定)

  • 2003年仏暦2546年教員・教育職員審議会法」

    →国立の初等中等教員に関して 資格制度から免許制度へと転換     (上記教育法第53条を受けて制定)


では、資格制度から免許制度への転換とは? ↓をご参照ください。

従来;国立の初・中等教育学校教員採用試験の受験資格

  1. 学士号の所持
  2. 18単位以上の教職科目の履修
  3. 1学期(4ヶ月―16週間)以上の教育実習の修了

新制度;教育専門職免許状取得の基礎資格、教員採用試験の受験資格

  1. 満20歳以上
  2. 教員・教育職員審議会が認定した教育学系の学位ないしは資格を有すること
  3. 1年以上の教育実習経験があること

教育専門職免許状発行元は、クルサパー(教員・教育職員審議会)です。外国人教員の免許状発行元と同じ機関ですね。ちなみに、現職タイ人教員には既に免許状を発行しているようですから、免許状取得云々で問題になることはなかったようです。

では、この新制度によって大学(教育学部)での教員養成はどんな影響を受けたのでしょう。
まず、2004年度入学者から課程が5年に引き上げられ、5年生次の1年間の教育実習が必須となりました。(今年はその教育実習元年。現5年生が各地で実習中です。)
また、2006年7月には、教員養成課程のカリキュラムに言及した告示*1も出ました。そこでは、一般課程30単位、専門課程74単位のほか、教職課程を50単位取得することが指針として示されています。教師としての専門性を高めるために、教壇に立つ前によく学び、よく考え、よく経験を積め、ということでしょうか。大変ですね。
このカリキュラムについては、また後日、改めてまとめたいと思います。


もっと詳しく知りたい方のために… 

京都教育大学教育学部の堀内孜教授が、タイの教員養成について最新の報告書をまとめておられます。

また、タイの教育改革については、熊本大学の牧貴愛氏の論考が参考になります。

また、次の本もとてもおススメです。堀内教授が「タイの教員養成」の章を執筆されています。

世界の教員養成〈1〉アジア編

世界の教員養成〈1〉アジア編

*1:Notificationof the Teachers Council of Thailand Board on Accreditation of Educational Degrees and Diplomas for Professional Practice(専門職職務のための教育学位及び資格証の認定に関するタイ国教員・教育職員審議会告示)

日本語能力試験当日。そしてこれから

2008年12月7日 天気:晴れ

[,right,w200,h130]無事、08年度の能力試験が終わりました。
4級受験者の受付風景→
制服を着ている人(=高校生、大学生)が多いですね。学校でバスを準備し、6時間かけて来た高校もありました。

1000人以上の人間が動いたこの日。知らぬ間に屋台が集まってきたのはタイ(コンケン)ならではのご愛嬌!?
[,w250,h180][,w250,h180]

[,right,h110,w80]スタッフは全員、背中に「日本語能力試験」(ふりがなつき)と書かれたポロシャツを着て、動き回っていました。アルバイト学生ではなく、大学職員がスタッフを務めたとのこと。スタッフの皆さん、朝7時からお疲れさまでした!


さて、日本語能力試験の今後については、日本語能力試験 JLPTに紹介されています。タイの場合、本格的な変更となるのは改定新試験が実施される予定の2010年度からです。このブログでも、追々紹介していきたいと思います。

日本語能力試験まであと3日

タイは明日から楽しい3連休。ですが、JLPT受験者には最後の追い込みのための休みになりそうですね。コンケン大学での受験者数は、各級以下のとおりです。

4級:463名, 3級:345名, 2級:103名, 1級:8名

やはり4級と3級の受験者が多いですね。年々増加している高校生の日本語学習者も受験に来るようです。年齢を問わず、東北地方で日本語を勉強している人が続々とコンケン大学に集まるのだと思うと、能力試験の威力を改めて感じずにはいられません。
http://www.li.kku.ac.th/pictures/P1040448_1.jpg 当日は午前も午後も400名以上の人間が農学部あたりをうろうろすることになります。教室を間違えて遅刻!なんていうことにならないように、もう一度お知らせです。        試験会場写真→

午前;8時40分集合
2級 Rm7012  / 3級 Rm7011、7013、7014
午後;13時10分集合
1級 LI(Ottawa) / 4級 Rm7011、7012、7013、7014

http://www.li.kku.ac.th/japan2008.phpでは上記情報に加え、自分がどの教室で受験するかもわかるようになっています。


当日は、学生の引率でコンケン大学に来る先生方も多いと聞いています。私はスタッフポロシャツを着て受験会場(農学部)の関係者室にいますので、ぜひ立ち寄って声をかけてください!


さて、先日、国際交流基金のブログ「地球を、開けよう。」が、このブログを紹介してくださいました。
http://d.hatena.ne.jp/japanfoundation/20081201/p1
思いがけないことでしたが、嬉しいものですね。励みになります。

このJFのブログ、「日本語からの」のカテゴリーをクリックすると国際交流基金が行っている様々な日本語事業が楽しく紹介されています。バンコク日本文化センターの研修の記事も載っていましたよ。
http://d.hatena.ne.jp/japanfoundation/20080819

若手日本語教師派遣事業・受入れ校 & 中等学校現職教員日本語教師新規養成講座・受講生 募集

JFバンコク日本文化センターのHPに、下記二つの募集案内が出ています。

1若手日本語教師派遣事業(第2期)受入れ校http://www.jfbkk.or.th/jl/announce0142jp.html
2中等学校現職教員日本語教師新規養成講座(第13期)受講生http://www.jfbkk.or.th/jl/announce0143jp.html

1は、a)タイ人の日本語教師がいて、b)日本人教師がいないことが応募の基本条件です。タイ人の先生が頑張って教えているが日本人(ネイティブ)教員がいない、そんな中等学校が近くにあれば、ぜひその先生に勧めてみてください。

1も2もタイ教育省→教育省の地方事務局から各中等学校に案内と募集要項が送られています。応募も各中等学校→タイ教育省中等教育局(OBEC)のようですね。1は1月9日、2は1月30日締め切りです。
↓OBECのホームページhttp://www.obec.go.th/new

にほんごドキドキ体験&交流<訪問後>

日本人学校訪問」+日本語学習の試み最終回です。

★体験についてまとめる、御礼の手紙を書く(3年生)
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  • 参考:「日本語ドキドキ体験交流活動集」(凡人社)
  • 狙い:書くことと現実の体験・交流を結びつける
  • 方法:上記テキスト利用。ペアワークでお互いの体験について聞き合った後、話したことをもとに文章をまとめる。御礼の手紙は、授業に参加したクラスに宛ててグループ毎に1通作成。

↓参照ページ(p.80)と作文例(いつもながら大きくてすみません)

専攻の大学生にしては簡単な文章だと思った方もいるかもしれませんね。実際、書くのにあまり時間はかかっていません。しかし、作文に至るまでのプロセスで自分が見たもの・見たことを振り返る機会を得られたようです。

↓御礼の手紙の例

この手紙は「4年○組のみなさん、△△先生へ」で始まります。そのため「担任の先生に名前を聞く」というタスクを事前に出し、丁寧な聞き方を練習し、タスクシートも配布しました。しかし。当日興奮しすぎたのか、ほとんどの学生が名前を聞いてくることを忘れていました…。ちゃんと覚えていた学生も、下の名前だけ聞いてきていたり(←タイでの注意ポイントですね!)。まあ、そんなもんです。
この手紙の最後には学生のメールアドレスも書いてあります。この手紙が次の交流へとつながるといいなあという思いをこめて。

体験のまとめと御礼の手紙、どちらも余り肩に力が入ったものではないことにお気づきでしょうか。「この体験を通じて日本語を勉強させる!」と思いすぎると楽しさも半減です。


さて、最後に本実践で中心的な役割を果たした教材をご紹介しましょう。

日本語ドキドキ体験交流活動集

日本語ドキドキ体験交流活動集

http://www.jpf.go.jp/j/publish/japanese/dokidoki/index.html

この教材は訪日研修の実践の蓄積から生まれたものです。教室の外でのさまざまなリソースを活用して体験の中で日本語を学ぶ、というコンセプトは一見海外の現場には適していなさそうですが、タイには日系企業も日本人も多く、日本国外でありながら日本に触れられるところが比較的多いはずです。これを上手く生かさない手はありません。この教材があると、日本人宅へのホームステイ、工場見学、交流会など体験・交流の活動を企画してみようかなという気になるから不思議です。「うちはバンコクから離れているから…」と思った先生方、バンコクから離れているところに住む学生たちだからこそのメリットもあるようですよ(ふるさと紹介の例)。

にほんごドキドキ体験&交流<訪問前2>

昨日に引き続き、「日本人学校訪問」+日本語学習の試みです

★生徒とのQA練習、ふるさと紹介の1分スピーチ作成(3年生)

  • 参考:「日本語ドキドキ体験交流活動集」(凡人社)
  • 狙い:日本語が苦手な学生の不安を和らげる。コミュニケーションのツール。
  • 方法:上記テキストを参照。単語の確認、ペアで想定QA練習、故郷の紹介スピーチ作成など。(学生個人のレベルによって難易度を変える)

↓参照ページ(『日本語ドキドキ体験交流活動集』P.76〜P.80)
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同じタイに住んでいると言っても、バンコクからコンケンまではバスで6時間。コンケンについて、大学の生活について等の質問がどんどんでてきました。
こうして事前に準備しておいたことで、当日の緊張も幾分か和らいだようですね(写真)。子供は早口だった!とみんな口を揃えて言っていましたが。

にほんごドキドキ体験&交流<訪問前>

11月初旬、教育学部日本語教育課程の3,4年生約40名と一緒に、泰日協会学校(バンコク日本人学校を訪問しました。小学部と中学部を合わせると生徒数が約2400人と世界最大級の規模を誇る学校ですが、大変アットホームな雰囲気で迎えてくださいました。学校紹介、校内見学、授業参加&生徒さんとの交流など、とても貴重な体験でした。泰日協会学校 バンコク日本人学校、シラチャ日本人学校公式サイト

タイ国内にある学校と言えども、門をくぐればそこは日本。そこで、この機会を日本体験、日本語学習と結びつけてみました。今日から数回に分けて、それをご紹介します。まずは、訪問前の準備から…

訪問前の準備
1.学校案内のパンフレット作成(4年生)
2.生徒とのQA練習、ふるさと紹介の1分スピーチ作成(3年生)

★学校案内のパンフレット

  • 参考:JFバンコク日本文化センターの研修の実践(タワン2008年8月号P.19参照)pdfダウンロードはここから
  • 狙い:コンケン、コンケン大学のPR。コミュニケーションのツール。
  • 方法:学生をグループ(コンケン大学案内、日本語教育課程案内、コンケン観光案内)に分ける。授業では例を見せ、下書き作成。PCを使った作業は宿題。2枚を両面コピーして、半分に折ればパンフレットのできあがり♪

下の写真は、コンケン大学案内とコンケン観光案内です(4年生作;大きくてすみません…)。1枚目左側が裏表紙で、右側が表紙。2枚目は見開きで左側が1ページめ、右側が2ページめです。



[,w90,h67,right]このパンフレット、本当におすすめです。訪問時だけではなく、お客様を学校に迎える時にも使えるし、一度作っておけばずっと役立ちそうです。特に、学生の手作りの場合は相手方と話もはずみます。今回は、交流したクラスの全生徒さんに配りました。カラーコピーはお金がかかりすぎるので、ピンクや水色の色紙に白黒でコピー。生徒さんたちも喜んで読んでくれたようです(写真)。