音声・発音のクラス、どうしていますか?
タイの大学に来て、音声・発音等の科目を教えることになった先生、いませんか。
タイ人の先生は「私はネイティブじゃないのでよろしくお願いします」と言うけれど、ネイティブならではの悩みもありますよね。その上、1学期の授業をどうデザインしたらいいか?
科目になっていない学校もあるとは思いますが、少なくとも私の周りには3人、この科目担当になって困っている日本人先生がいましたし、先日バンコク日本文化センターが行った08年度第3回日本語教育セミナーのテーマも「音声の指導」。タイ人と日本人のどちらにとっても悩み深きものなのかもしれません。
同セミナーでは、横浜国立大学の河野俊之准教授がプロソディー(音の大きさ・長さ・高さ)の指導を中心に、効果的な音声の指導法についてお話になりました。かの有名な『1日10分の発音練習』の著者である先生のご登場に、タイ各地からかなりの数の先生が集まっていました。
- 作者: 河野俊之,築地伸美,松崎寛,串田真知子
- 出版社/メーカー: くろしお出版
- 発売日: 2004/01/01
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そして、こちらも必読!
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さて。コンケン大学教育学部でも後期(11月〜2月)に「Japanese Phonetics」という1年生対象の科目がありました。もとはタイ人の先生が一人で担当だったのですが、3コマ=3時間連続という時間割に、「私1人で3時間も発音を教え続けるのは無理…!!」となり、急遽チームティーチングに。
授業をデザインする際には、チームティーチングであること、3時間という時間を生かすことを考えました。また、教育学部の学生は将来日本語の先生になる可能性が高いので、将来役立ちそうな「音声・発音」の指導を身をもって経験しておく、というのも大切な目的です。今年度、やってみたのはこんな感じ。
1コマめ(日本人Tが中心) : 体を使って音と声を出す
2コマめ(タイ人Tが中心) : 音声学および日本語音声の理論・知識
3コマめ(日本人T+タイ人T) : 日本語を楽しむ−作品を読む−
1コマめ:体を使って音と声を出す ベースにあるのは、リズム・イントネーションなどプロソディックな部分の指導を重視するという考え。かの有名なVT法はその代表ですね。これに関しては、ひょうご日本語教師連絡会議VT法研究会「授業で使える発音指導〜VT法を活用して」の解説書とビデオは、とても参考になります。(世界の日本語教育に貢献するにほんごの凡人社の書籍検索で「VT法」と入れると出てきます。)
今回は、そこまで特化するわけではなく、タイ人の先生がタイ人の高校生に指導する、という場面を意識した内容・やり方を試みました。下の本↓も参考にしています。
- 作者: 山本紀美子,浅井清子,荻野誠人,吉田絹子
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手や体を使うことで、日本語のリズムやイントネーション、母音がスムーズに繰り出される感じ、楽器のように声が自然に鳴っているような感じを大切にしました。みんなの日本語の声がだんだん大きくなり、楽しそうでした。指示は日本語のみでしたが問題なし。みんな音を感じる体になっていたように思います。
2コマめ:音声学および日本語音声の理論・知識
大学の授業なら、音声学や日本語音声の知識の伝達も必要。日本語国際センター著「発音」のタイ語訳版を使って、タイ人の先生が講義。
3コマめ:日本語を楽しむ−作品を読む−
谷川俊太郎「どんどこどん」、まきさちお「あひるのあくび」、早口言葉などで、日本語を楽しむ(タイ人の先生の通訳あり)。後半は、草野心平「秋の夜の会話」、菊田まりこ「いつでも会える」などを使い、ある気持ちの時に日本語ではどんな表現(音の高さ、長さなど)になるか、作品の中身にも触れながら練習しました。指導は、1コマめの実践版としてプロソディックな部分を中心に。
- 作者: 菊田まりこ
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最後は、24人を4グループに分け、その中でさらに分担を決めて「いつでも会える」の発表会。
<音声をアップロードしようとしています…少々おまちください。とりあえず、発表時にバックで使用したパワポの一部紹介。これに音をつけられるよう挑戦中です。>
この作品での発音がうまくできたとしても、それが全ての日本語使用に通用するわけではないのは承知の上。河野先生は「目標音が言えたとしても、それを常に言えるようになるためには、目標言語が言える状態を自覚すること、つまり、自己モニターの能力が必要」と書いておられます。そこへ行くにはもうワン(ツー?スリー?)ステップ必要!
ただ、今回1年生が「この練習方法でどうだったか」をまず感じておいてくれたら、そこからつないでいけるのではないかなと思っています。
ここでは参考にしたものを中心にざっくりと書きましたので、今度担当することになって困っている、なんて方はいつでも連絡ください。とは言え、私が取り入れたことは、日本語教育の先輩方がやってこられたことであり、それをタイの現場に当てはめて考えただけ(「いつでも会える」の朗読発表、関西国際センターでの10年前の実践を参考にしました)。それでも、今回実際にやってみてとても勉強になりました。他にもいろんな方法があると思います。一緒に考えてみませんか?